今年に入って県内で2つのSOHO事業者が、法人化への取り組みとして企業組合を設立されました。
個人がSOHOとして事業を起こす場合や個人事業者が経営規模の適正化を図る場合、安定した自らの働く場を確保する場合などには、「企業組合」が適しているといわれていますが、具体的にどのように適しているのか調べてみました。
- 1 企業組合とは
- 個人が創業する際に、会社に比べ設立時の資本金(出資金)が低額でも法人格及び有限責任を取得できるように考えられた、いわば簡易な会社ともいうべき組合です。
中小企業等協同組合法で定められた組合組織の一つであり、事業者が集まって構成する協同組合とは違い、個人が4人以上集まり参加して設立する組合法人です。組合員は個人に限られますので、会社は加入できませんが、事業者に限らず勤労者、主婦なども加入できます。
企業組合の設立に当たっては、県知事の設立認可が必要です。
- 2 個人事業と企業組合についてそれぞれのメリット・デメリット
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- (1) 個人事業のメリット
- ○開業手続きが簡単
- 設立登記の手続きが必要なく、登記費用も必要ない。
- ○商売替え、移転、撤退が自由
- 面倒な手続きが必要なく、身軽である。
- ○経理がラク
- 簡易帳簿での記帳が認められ、高度な会計や簿記の知識はいらない。
- ○柔軟な資金移動が可能
- 事業用資金から個人の生活費へ、あるいはその逆の資金の移動が柔軟に行える。
- (2)企業組合のメリット
- ○有限責任
- 事業に失敗した場合、出資金の範囲内で責任を負うことになる。(但し、事業主は連帯保証を求められる場合が多く、事実上無限責任となることが多い。)
- ○税金面で有利
- 税率が一律のため、所得が増えれば、有利になる。(所得が3000万円を超えた場合、個人事業の税率50%に対し、会社組織の税率は34.5%。)
- 登記費用は非課税になる。
- ○信用面で有利
- 商取引や金融機関から融資を受ける際、個人事業より有利に扱われる場合が多い。
- 経済的・社会的地位の向上が図られ、県や企業からも受注しやすくなる。
- ○補助
- 商工中金の融資や高度化資金の融資等が受けられる。
- 中央会より、組合を対象とした各種補助事業が受けられる。
- 3 企業組合による創業のメリット
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- 会社と違い、最低資本金の制限がない。
- 法律に基づく、許可法人である。
- 会社と同様にあらゆる事業を定款に従って経営することができる。
- 将来に事業が発展すれば、会社への組織変更が可能である。
- 組合員の加入や脱退は原則として自由である。
- 設立の詳しい手続きは中央会に相談できる。
- 4 企業組合の制度
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企業組合 |
株式会社(有限会社) |
設立要件 |
4人以上の個人が参加 |
資本金は1,000万円以上(300万円以上) |
組合員資格 |
個人 |
無制限 |
責任 |
有限責任 |
有限責任 |
発起人数 |
4人以上 |
1人以上 |
加入 |
自由 |
株式の譲渡・増資割当による |
任意脱退 |
自由 |
株式の譲渡による |
組合員比率 |
全従業員の1/2以上 (一定条件を満たすもの1/3以上) |
ない |
従事比率 |
全組合員の2/3以上 (一定条件を満たすもの1/2以上) |
ない |
1組合員出資限度 |
100分の25 (脱退の場合100分の35) |
ない |
根拠法 |
中小企業等協同組合法 |
商法(有限会社法) |
- 5 企業組合設立の手順
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- 出資者である設立発起人を4人以上決定します。
- 設立発起人会を開催し、定款、事業計画書、収支予算書、などを作成します。
- さらに、設立同意者を募集し、創立総会を開催します。
ここで、3人以上の理事、1人以上の監事を選出、議事録を残します。
- 選出された理事・監事により理事会を開催し、代表理事・専務理事を選任し、事務所所在地を決定、議事録を残します。
- 創立総会開催後2週間以内に都道府県庁に設立認可の申請を行います。
- 設立認可後、発起人は書面を持って事務の引継ぎを理事に対して行います。
引継ぎを受けたら、理事は設立同意者が引き受けた出資の払込を通知し、徴収します。
- 出資払込完了後2週間以内に所轄の登記事務所に登記の申請を行います。
- 登記が完了したら、直ちに所轄の税務署、各地の振興局、市町村税務課に、法人設立の届出を行います。
- そこで、企業組合を設立された『企業組合チューリップソーホー』にお尋ねました。
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- 1 企業組合にされる際に相談された機関等
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- 親切丁寧にアドバイスいただきました。設立後も経営、経理面でいろいろ教えていただいています。
- 2 SOHO事業者が企業組合にするメリット
- SOHOのような小規模な事業者が経営規模の適正化を図る場合や、安定した自らの働く場を確保するのにはとても適していると思います。
- 3 企業組合にされる際に最重要視された点
- 少ない出資金額で設立できること。
- 組合員の意識が一体化することにより、売り上げの向上を目指す。
- 4 企業組合にされて、以前と比較されてどうか
- 私のようにSOHO個人ではなかなか受けれなかった大きな仕事も受注できるようになりました。(大手企業や官公庁など、今までは入札にさえ参加できなかった大きな仕事にも法人として胸を張って受けることができる。)
- 私たちのようなオペレーティング業務のものは価格破壊が厳しいですが、企業組合にしてから受注価格も比較的上がりました。
- 5 その他(アドバイスなど)
- SOHOのような個人事業者が法人化するには、いろいろな方法があると思います。株式、有限などの会社、事業協同組合、そして私共のような企業組合・・・。自分の目的が利益追求なのか、または経営の合理化なのかなどによっても方法が違ってくると思います。
将来的な夢や構造をしっかり考えた上で設立されたら良いと思います。
- まとめ(SOHOの皆様へ)
- 当面は、手持ちのヒト・モノ・カネで運営できるのであれば、個人事業の方がいいでしょう。登記などの手続きには手間がかかります。また、会社組織でも、現実的には、資金や人材が、初めから簡単に集まるわけではありません。
まずは個人事業で進めて、事業が拡大出来そうであれば、会社組織に変更するというのが得策と言えます。そのひとつの選択肢として、企業組合は大きなメリットを得られる方法といえます。
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